「免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか」 坂口志文著,ブルーバックス,2020年10月
この本を読むことになった理由は,
最近論文で制御性T細胞が出てきたから.最近よく名前を目にしていたし,そもそも免疫自体詳しくないので,免疫の勉強として読もうと思った.
第1章
そうなんだ.具体的に誰がβ細胞を攻撃するんだろう.
全然関係ないけど,β細胞って膵臓が部分欠損すると分裂して失った分を補おうとするらしいね.その過程で脱分化して,また分化していくんだけど,未分化状態の細胞の方が分化状態の細胞より発現する遺伝子の種類が豊富で,文化に伴ってその種類は減少していくらしい.シングルセル解析の講義でそう聞いた. 論文読みたい.
1型糖尿病,多発性硬化症などのように特定の臓器だけが影響を受ける病気を「臓器特異的自己免疫疾患」と呼ぶ.これに対して,関節リマウチ,全身性エリテマトーデスのように障害が全身に及ぶものは「全身性自己免疫疾患」と呼ばれる.p.20
自己免疫疾患にも分類があるんだね.
マウスに,自己の体の一部である,自分の中枢神経系から採取したミエリン塩基性タンパク質を,抗原に対する免疫応答を増強させる働きのあるアジュバントと共に注射すると,激しい自己免疫反応が起こってくる.
その後に簡単な説明があったけど,理解できなかった.
アジュバントが,自己抗原に対して,免疫応答が起こるように変化させるということだと理解したけど,,てか,アジュバントって何者?
T細胞の一種である制御性T細胞は,免疫反応を抑制的に制御するように働く免疫細胞で,正常な個体の血液中のCD4陽性T細胞の約10%を占めており,正常な正常な免疫機能の維持に不可欠な細胞であることが明らかとなった.p.25
よくCD4陽性細胞と聞くが,なぜこれが重要なのだろう?多分免疫の人にとっては常識だろうから調べたい.
調べた.まず,T細胞はCD4陽性とCD8陽性に大別される.一般にCD4陽性はヘルパーT細胞に分化するのに対して,CD8陽性はキラーT細胞に分化する.
私たちは,制御性T細胞の発生,機能発現,分化状態の維持,それらのすべてを制御しているマスター遺伝子が,Foxp3であることを発見したのだ.p.31
Foxp3はforkhead box P3で転写因子として働く.マウスのFoxp3に変異-->Tregの数や機能に異常-->全身の臓器に重篤な自己免疫疾患,らしい.ちなみに,Forkhead boxってよく聞くけどどんなモチーフだろう.
第二章
クローン選択説が登場する前の免疫学では,1つの抗体産生細胞が多種類の抗体を産生する能力を持っていて,抗原が入ってくるとそれが鋳型となって,抗体が決定されて,複製されるという「鋳型説」が有力だった.P.51
そうなんだ.ちなみに,クローン選択説を提唱したのはBurnetで,骨髄細胞から,前駆細胞を経て,一種類の抗体を産生するB細胞が多種類分化してくるんだけど,抗原が侵入したときに特異的に適合するB細胞だけが増殖して,形質細胞になるという説.
第二章の最後にエールリヒの「側鎖説」の紹介もあった.面白かった.「Corpora non agunt nisi fixate(結合なくして反応なし)」,シンプルだけど,その通りだと思う.
胸腺由来細胞といっても,そもそもすべてのリンパ球が骨髄に由来することを考えれば,T細胞という呼び名は適当ではないと言えるかもしれない.P.56
T細胞もB細胞も,もともとは骨髄の造血肝細胞に由来することから.確かにそうだけど,前駆細胞が分化して,実際にT細胞に成熟する場所がThymusで,B細胞はBone marrowだから,成熟場所の由来によって分けたということで,別にいい気はする笑.というか,前駆細胞が胸腺まで遊走するの?
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第3章
機能に注目して命名された「ヘルパーT細胞」は,細胞表面分子に注目すると「CD4陽性細胞」となる.p.76
1975年,ケーラーらがモノクローナル抗体発明.しかし,目的のB細胞を培養するのは,困難だった(生体からの単離の難しさ,B細胞が培養1週間ほどで死ぬことから).
--> B細胞とミエローマ細胞を融合して,ハイブリドーマを作成することで,目的の抗体を産生する細胞を維持できるようになった.
--> 抗体を用いて,CD4陽性細胞の単離が可能になった.1980年時点で,CD4の他にもCD8, CD5などのマーカーが利用できるようになっていた.
--> CD4はヘルパーT細胞,CD8はキラーT細胞のマーカーとわかっていたが,CD5は当時不明だった.
--> CD5陽性細胞を単離(坂口).その中で,発現がHighの細胞とLowの細胞に分けた.
--> 胸腺が欠損してリンパ球産生ができなくなったヌードマウスに,CD5-Low T細胞を移入した.
--> 甲状腺炎や胃炎などの自己免疫疾患を発症した.CD5-Low T細胞集団には,自己免疫疾患を発症させたT細胞が含まれるが,免疫応答を抑制するT細胞は欠如している,と考えられる.
--> CD5-LowとHigh T細胞を合わせて,ヌードマウスに移入.
--> 自己免疫疾患は発症しなかった.よって,CD5-High T細胞には,免疫応答を抑制するT細胞,つまり制御性T細胞が含まれている?しかし,CD5陽性細胞は,CD4陽性細胞全体の約80%を占めていた.制御性T細胞だけに発現する特異的マーカーを探さなくてはいけない.
--> CD4陽性細胞集団から,CD25陽性細胞を除去して,ヌードマウスに移入した場合,自己免疫疾患を発症.一方で,CD25陽性細胞を含む,CD4陽性細胞を移入した場合は,自己免疫疾患は発症しない.
--> CD25陽性CD4陽性細胞が制御性T細胞だった! CD4陽性細胞全体のうち,5-10%ほどがCD25陽性.CD25は,IL-2受容体のαサブユニット.
--> インフルなどに罹ればリンパ球の10%程度の減少は珍しくないので,制御性T細胞もこの時減少していて,自己免疫が発症しやすくなるのでは?
Reviw, 時間があれば読みたい.
https://www.cell.com/fulltext/S0092-8674(08)00624-7
利根川氏は,1987年に日本人として初めてノーベル生理学・医学賞を,それも免疫学の分野で受賞した研究者である.p.86
1890年,北里柴三郎が抗毒素(抗体)を発見.破傷風やジフテリアなど多様な感染症に対応できるが,その多様性を生み出す機構については不明.
-->側鎖説や鋳型説など,抗体の多様性を説明する仮説が出てきたものの,その詳細は明らかではなかった.
--> 1976年,利根川がVDJ recombinationで,抗体の多様性を説明.
利根川進.VDJ recombinationをどうやって証明したんだろう.
僕は最近の光遺伝学の論文と本を一冊しか読んだことはないけど,いつか発表を聞いてみたい.『私の脳科学講義』はCre-loxpの話や,記憶についての話が書かれていて面白い.
第5章
Foxp3遺伝子がコントロールする細胞表面分子として,CD152(CTLA-4)も明らかになった.このほかの表面分子として,CD357(GITR)も,Tレグ表面に多く発現していることが明らかとなった.Tレグで特異的にCTLA-4分子を欠損させると,Foxp3の欠損と同じように自己免疫疾患が起こってくる.
CTLA-4, GITR, 誰や.
Tレグの免疫抑制の方法には大別すると二種類あり,①サイトカイン等の化学物質を用いた,細胞間接触を伴わない免疫抑制,②細胞表面に発現する補助刺激分子を使った細胞間接触を伴う免疫抑制がある.
①では,IL-2.IL-2はT細胞の増殖を促進するため,免疫応答を亢進させる.一方で,TレグはIL-2を,IL-2受容体に結合させることで,分泌されたIL-2を枯渇させ,免疫応答を抑制する.
②では,