Neurology | Sympathetic Nervous System

 YoutubeでNinja Nerd Lectureという医学系の講義動画があります.解剖学や生理学だけでなく,化学や神経科学の動画も上げていて,非常に見応えがあります.シンプルで味のある図とともに,生命の現象や構造を説明していき,かつそれらの役割や目的と一緒に,1つ1つパズルをはめ込んでいくように説明していくのでとても面白いです.講義は全て英語ですが,専門用語を随時調べながら聞いていけば,難しすぎることはないと思います.しかし,やはり英語が苦手な方もいますので,ここでは個人的な勉強も(大いに)兼ねて,Ninja nerdの講義を文字に起こしていこうと思います.

出来るだけ正確に写していこうと思います.翻訳や内容の間違いについては,指摘していただければ嬉しいです.なお,?マークは正しい訳語がわからない時につけていますので,日本語での用語を教えていただければ幸いです.

 

では,今回は「Neurology | Sympathetic Nervous System」をお届けします.

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今回は,Sympathetic nervous system(交感神経系)についての講義である.Autonomic nervous systemの講義では,ganglia(神経節)やparasympathetic nervous system(副交感神経系)について簡単に紹介した.そして,今回はsplanchnic nerve(内臓神経?)について,そのTerget organs(効果器)とともに,より具体的に見ていく.

 

 Thoracolumber(胸腰部) outflow

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0:38

まず,彼が指差す先の脊髄には,Thoracolumber(胸腰部) outflowがある.これは,T1~L2 (/L3)からなる交感神経である.青色で示すのは,preganglionic motor neurons(節前運動神経?)の細胞体である.これら細胞体は,intermediolateral column(中間質外側柱),もしくはlateral gray hornにある.

 

prevertebral ganglia

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1:30

脊髄の外側には,Ganglia (神経節)が複数連なっている.神経節とは,中枢神経系以外の末梢部にある,細胞体の集合のことである.特に脊髄の横側にある神経節をChain ganglia(傍神経節)と呼び,脊髄の前側にある神経節をprevertebral ganglia(脊椎神経節)と呼ぶ.prevertebral gangliaは,collateral gangliaやpreaortic gangliaなどとも呼ばれる.今回は,このprevertebral gangliaについて注目して説明する.

SCG, MCG, ICG

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2:40

prevertebral gangliaの頭側には,以下の3つの神経節がある.

SCG (Superior Cervical ganglion: 上頸神経節)

MCG (Middle Cervical gangion: 中頚神経節)

ICG (Inferior Cervical ganglion: 下頚神経節)

※ 人によっては,ICGとすぐ下の胸部神経節が融合して,stellate ganglionと呼ばれる構造をとることもある.

 

Corotid plexus

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9:17

preganglionic motor neuronsのT1~T3は,Chain gangliaを通過して,SCGでシナプスを形成する.SCGの神経は頸動脈を周回(Corotid plexus: 内頸動脈を囲む神経叢)して,眼をはじめとする器官に投射する.
 

眼,唾液腺,涙腺

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8:53

眼に投射したSCG神経は,NE(Norepinephrine)を放出して,dialator pupillae(瞳孔散大筋)の収縮を促す.これにより,Far Vision(広い視野)が獲得でき,交感神経が活性化する状況(flight-or-fight)で有利に動くことができるようになる.(つまり,敵を早く見つけて逃げたり,戦ったりすること).また,CIliaris(毛様体?)にも投射し,毛様体筋を収縮させる.これにより,レンズが薄くなる.この結果,遠くまでピントが合うようになる.

Salivary glands(唾液腺)に投射したSCG神経もNEを放出する.NEは血管の平滑筋にも作用し,収縮を促す.収縮するとsalivary glandsへの血流量が少なくなる,つまり分泌する物質(つまり唾液)の供給が減少する.また,NEは唾液腺細胞にあるアドレナリン受容体(※エピネフリン=アドレナリン)に結合することで,Mucin(ムチン)の産生を促進する.MucinはGlycoproteinで,唾液がThickでviscousになる(粘性が高くなる).

Lacrimal glands(涙腺)に投射したSCG神経はNEを放出し,Lacrimation(涙の分泌)を抑制する.

 

心臓,食道,肺

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14:12

MCGとICGの交感神経は,大きく3つの器官に投射する.SCG神経の一部も合流する.

・心臓へ投射するCardiac plexus(心臓神経叢)

2ヶ所に作用する.1つはnodal cellsに作用し,Heart rates(HR)を上昇させる.もう1つは,myocardium muscle cells(心筋細胞)に作用し,収縮を促進する.その結果,Cardiac output(CO: 心拍出量)を増加させ,ひいては血圧の上昇につながる.

・食道へ投射する pleux (食道神経叢)

蠕動運動の抑制.(食道で蠕動運動あるの?)

・肺へ投射するPulmonary plexus (肺神経叢?)

Branchioles(細気管支)の拡張を引き起こす.また,Branchial arteries(?)における平滑筋の収縮を促すことで,気管支が拡張できるスペースを大きくすることができる.そして,血管からの分泌も抑制される.

 

T1-T5

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15:40

T1~T5は,Chain gangliaにシナプスを作ることもある.Chain gangliaの神経は,SCG/MCG/ICG由来の神経と合流して,先ほどの3つの神経叢になる.(この辺りは教科書によって曖昧)

 

Greater splanchnic nerve

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17:00

T5-T9は,chain gagliaに投射せずに,そこを通り抜け,Greater splanchnic nerve (大内蔵神経)となる.この神経はCeriac ganglion(腹腔神経節)と呼ばれるparaganglionに投射する.

 

Ceriac ganglion

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18:05

Ceriac ganglionは様々な器官に投射する.

 

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20:29

その1つとして胃があり,そこではエネルギー消費の多い蠕動運動を抑制する.もう1つ重要な働きとして,吸収や分泌を抑制することがある.(Splanchnic circulationを減少させるために,血管を収縮させる.アスピリンやアルコールの吸収を抑制する.) また,pyloric sphrincter(幽門括約筋)の収縮を促す機能もある.これにより,食物が胃からduodenum(十二指腸)へ流れるのを防ぎ,やはり消化機能を抑制する.

(幽門括約筋の収縮と蠕動運動の抑制は何かが違う.それは前者がa1AR,後者がb2ARという受容体の違いが原因であると言っていたが,理解していない)

 

肝臓,胆管,すい臓,脾臓

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23:13

Ceriac ganglionは肝臓にも投射する.そこでは,Glycogenolysisを促進する.これにより,血糖値が上昇し,来たるエネルギー消費(戦ったり,逃げたり)に備えることができる.

また,Biliary tree(胆管) flowを減少させる作用もある.これにより,乳化の抑制,つまり消化機能が抑えられる.

そして,すい臓ランゲルハンス島のα細胞とβ細胞にも作用する.α細胞からはグルカゴン,β細胞からはインスリンが分泌される.この場合,β細胞を抑制し,インスリン産生を抑制する.この結果,血糖値を維持し,エネルギー消費に備えることができる.一方で,α細胞のグルカゴン産生を亢進させる.その結果,グリコーゲン分解を促進する.

(疑問:インスリンの効果は,肝臓や筋肉,脳などの細胞で,GLUTの細胞膜露出を促進し,グルコースの取り込みを亢進する,そして,グリコーゲンの産生を促すことである.では,インスリンが減少すれば,これらの器官でグルコース取り込みが減少し,エネルギー消費に備えることができなくなるのではないか?)

 最後に,splenic contraction(脾臓の収縮)も促す.ここでは,あまり重要ではないらしい.

 

副腎髄質

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25:27

Greater splanchnic nerve (GSN,大内蔵神経)は,他にも投射先がある.Adrenal medulla(副腎髄質)である.

一般に,Sympathetic preganglion neuronsは短く,Sympathetic postganglionic neuronsは長い.しかし,副腎髄質への投射は例外で,preが長く,postが短い.そして,この短いpostganglionic neuronsは,Chromaffin cells (クロム親和性細胞)と呼ばれる.またこの細胞は,Intramural ganglion(?)で,二種類の化学物質を血中に放出する.1つはNE (Norepinephrine), もう1つはEpi(Epinephrine).これらは,ローカルに作用するprasympathetic nerveと比べて,血液を介して身体中に広く作用する特徴がある.

 

Superior mesenteric ganglion

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27:58

Greater splanchnic nerveは,Superior mesenteric ganglion(上腸間膜動脈神経節?)にも投射する.この神経はsuperior mesenteric artery(上腸間膜動脈)に化学物質を放出して,腸の様々な場所に作用する.様々な場所(省略)に作用するが,その効果はシンプルである.つまり,蠕動運動,吸収または分泌の抑制で,いずれも消化を抑制するはたらきを果たす.

 

Lesser Splanchnic nerve,腎臓

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31:23

T10, T11は,Lesser Splanchnic nerve(LSN, 小内臓神経)と呼ばれ,Chain gangliaを通過し,Aorticorenal ganglion(大動脈腎動脈神経節?)にシナプスを作る.この後,神経は腎臓に投射する.その効果は以下.

・血管収縮 --> 血流減少 --> Urine(尿) productionの抑制

・JG cells(傍糸球体細胞)のβ1受容体刺激 --> Renin放出 --> Angiotensin Ⅱ cascade --> aldosterone(adh)の分泌 --> 血圧上昇

交感神経が活性化する状況では,腎臓や胃,腸などのfight-or-flight時には必要ない器官への血流量は減少する.一方で,Renin-Angiotensin-aldosterone系を活性化したり,心拍や拍出量を増加させることで,血圧を上げ,脳や筋肉など,fight-or-flight時に必要な器官への血流を増やしている.

 

Least splanchnic nerve,尿管

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33:44

T12は,Least splanchnic nerve(?)と呼ばれ,Chain gangliaを通過するが,神経節に今まで通りシナプスを作らない.というのも,ここの神経節は広く散在し,Renal plexus(腎神経叢?)と呼ばれる.この神経叢由来の神経は,ureter(尿管)に投射し,尿管の蠕動運動を抑制することで,尿の産生を減少させる.

 

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34:19

 L1-L2/L3は,Lumber splanchnic nervesと呼ばれ,Chain gangliaを通過し,合流する.そして,先ずは腸に投射する.

 

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35:58

Lumber splanchnic nerves(腰内臓神経?)は,Inferior mesenteric ganglion(下腸間膜動脈神経節?)にシナプスを作り,この神経は腸に投射する.そこでは,やはり蠕動運動を抑制し,消化を妨げるように働く.

 

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36:31

L1-L3神経には,T12が合流することがある.全てChain gangliaを通過するが,L4を通過することもある.通過した後は,同じくLumber splanchnic nerveと呼ばれ,膀胱に投射する.

 

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40:22

Lumber splanchnic nerveは,2つの神経節/神経叢にシナプスと形成する.

・Superior Hypogastric ganglion(下腹神経節)

Detrusor muscle(排尿筋)に投射し,筋細胞のβ2/3受容体を刺激 --> 筋収縮を抑制 --> mictrition(排尿)の抑制

α1ARを発現する(Internal)sphincter(括約筋)の収縮を促進 --> 排尿の抑制

・Intermesenteric plexus(?)

Inferior mesenteric arteriesの間にあるからInterと冠される.複数の投射先がある.Superior mesenteric nerves,Inferior mesenteric nerves,またhypogastric nervesと合流する(?).

 

T10~L2(Sacral splanchnic nerves)から生殖腺へ投射

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43:20

T10~L2神経はsacral splanchnic nervesとして,Chain gangliaを通過して,Gonads(生殖腺)へ投射する.雌であれば,vagina(膣)やOvary(卵巣)であり,雄であればpenis(陰茎)やscrotum(陰嚢)である.

交感神経系が活性化した場合,雄ではEjaculation(射精)が促される.一方,雌では状況によって発現するアドレナリン受容体が変化する(α1AR-->β2AR)ので,以下のようになる.

・Non-pregnant(妊娠していない時)-->α1ARの活性化--> Uterine contraction(子宮収縮)

・Pregnant (妊娠時)--> β2ARの活性化 --> 子宮弛緩

妊娠時に子宮が収縮して,胎児が出てきたら大変である.

 

生殖腺への寄与は,Inferior Hypogastric plexus由来の神経が大きい

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44:57

生殖腺へ投射する神経としての寄与について,Sacral splanchnic nerves(仙骨内臓神経)の寄与は少ないとされている.一方,寄与が大きいのは,Lumber splanchnic nervesが投射するHypogastric ganglion由来の神経である.この神経をInferior Hypogastric plexus(下下腹神経叢?)という.左右一対になって生殖腺へ投射する.

 

交感神経系の制御は視床下部とlimbic nucleiから主に受ける

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47:00

脳のHypothalamus(視床下部)とlimbic nuclei(大脳辺縁系?)由来の神経が,presynaptic fibersになって,postsynaptic gangliaに投射することで,交感神経系を制御する.部分的に大脳皮質からの制御も受ける.

 

日本語の用語について

以下のサイトを主に参考にしました.

痛みと鎮痛の基礎知識 - Pain Relief ー神経節

wikipediaWeblioなどの翻訳もたまに使っています.