脳を司る「脳」,毛内拡著,ブルーバックス,2020
ブルーバックスから神経生物学の本が出るのは久しぶりではないでしょうか.書店で中身を眺めてみて,面白そうだと思ったから読むことにしました.タイトルは,脳を司る「脳」.脳の重要な要素に神経細胞がありますが,それだけでは成り立ちませんというお話から始まります.では,神経細胞以外の重要な要素とはなんでしょうか?
グリア細胞や脳血管,脳脊髄液です.
では,これらはどのように重要なのでしょうか.そういうことが本書では紹介されています.
第1章 情報伝達の基本,ニューロンのはたらき
脳脊髄液の流れについて
脳脊髄液は,脳の中央にある脳室で作られている.脳室は左右に一対あり,側脳室と呼ばれている.脳室で作られた脳脊髄液は,すぐ下の第三脳室に流れる(側脳室が2つあるから,これが第三と呼ばれる).第三脳室から,中脳水道を通って,第四脳室に行く.
シンプルでわかりやすい図が載っている.第四脳室は脳幹と小脳の間くらいにありました.
側脳室は北欧にいる鹿の巻き角みたいで,どう流れるんだろうと思いました.
脳脊髄液について
そもそも脳脊髄液は,血液が濾過されて作られます.だから,脳室には血液を濾過する脈絡叢という場所があります.毛細血管が貼られていて,そこから染み出してきます.
脳細胞の内と外で異なるイオン濃度
イオン,外の濃度/ 内の濃度
Na+ ,150 mM/ 15 mM
K+,5 mM/ 100 mM
Ca2+,2 mM/ 0.2 uM
意外と大事なイオン濃度.Ca2+こんなに少ないんだなあという印象.
量子仮説
1950年代にカッツらによって提唱された.
1つの小胞からは,必ずまとまった量の伝達物質が放出されるというアイディアが提唱され,量子仮説と呼ばれています.量子というのは,現代の言葉でいうと「パケット」であり,携帯電話やインターネットで一度に同時に送る「情報のまとまり」のことを指す言葉です.(中略)アセチルコリンは,一回の活動電位で100~300個の小胞が1パケットとして放出されると考えられています.ちなみに,1つの小胞の中にはアセチルコリン分子が約6000個含まれれているとされています.
少し誤解しやすいところだと思う.自分の理解では,1つの小胞が放出されて起こるシナプス高細胞での応答がいつも同じ.でも,一回の活動電位で前細胞から放出される小胞の数(パケット)に違いがあると,後細胞での応答も変わってくる.(余談だけど,TTX処理によって活動電位を抑えると,活動電位による放出は無くなるんだけど,前神経から漏れ出る小胞があるとされる.これにより,postで応答が起こるんだけど,これをmEPSPと呼ぶ.mEPSPの頻度から,preの放出確率とかが推測できるらしい)
どうやって1つの小胞に大体6000個くらいって決まるのだろう?と思った.
Kiss-and-run
活動電位に伴うシナプス小胞放出は,完全な膜融合によるものではなく,部分的に融合して短時間のうちに戻るとする説.
初めて聞きました笑.
今日はここまで